faraway

こういう嵐の日には決まって同じ夢を見る。
私は部屋の中で三日三晩降り続けてもやまない雨を眺めている。ベランダへ続く窓の外ではザーザーと雨がずっと降っている。私はそれをなにをすることもなくぼんやりと見続けている。
すりガラスの向こうに人影があらわれ、窓をどんどんと叩くので、開けるとそこに神様が立っている。神様は白くて長い髪とひげの先から雨のしずくを垂らして、そこに立っている。窓を開けたので激しい雨が私の部屋の中に降り込んできて、床が一部水浸しになってしまう。私は、部屋が濡れるから神様は部屋の中に入ってくれればいいのに、と思うのだが、神様は入ろうとせずサッシを隔てて雨の降りしきるベランダに立っている。
神様は金の箱と銀の箱を私に差し出し、「好きな方を選んでいいよ」と私に言う。私の頭くらいある箱を目の前にして、私は神様に中身を聞く。
「どちらにも君が入っている」
と神様は私に言う。
私は確かにここにいるのだが、箱の中にも私が入っていると言う。私はもう一回、「その箱の中には何が入っているのですか」と神様に聞く。
神様は、
「一つには眠っているお姫様が入っている、もう一つには化け物が入っている」
と言って、私に箱を差し出す。神様はさっき、どちらにも私が入っていると言った。ということはどちらかの箱の中の私は化け物ということなのかな? と私は思う。
「化け物って、どんなのですか」
私が聞くと、神様は微笑んで言う。「獣が入っている」
「そちらを選んでしまったらどうなるんですか」
私は聞く。
「べつにどうにもならない。化け物は起きて、世界を壊してしまうだけだよ」
神様はそう言って、早く選べと言わんばかりに私に二つの箱を突きつける。
窓の外は相変わらず、激しい雨が降っていて、吹き込む雨でもう私も半分濡れている。
「その箱を選んだら、世界を私が壊してしまうってことですか」
神様はもう何も言わない。
「眠っているお姫様の方を選んだら、どうなるんですか」
神様はやっぱりもう何も言わない。
私はなんだこのセカイ系はと思いながら、どっちの箱を選ぼうか悩んで悩んで、そこでいつも目を覚ますので結局どっちを選んだのかわからない。化け物の入った箱を選んだのか、眠るお姫様が入った箱を選んだのか。
でも神様が言うにはそれはどちらも私らしい。
こういう嵐の日には決まってこの夢を見る。