いつか全てが嘘になるなら

高校生のときに付き合っていた男子に、「ずっと一緒にいたいね」と言ったことがあった。
ほんとに、本当に軽い気持ちだったのだ。だけどそれは、嘘なんかじゃなくて、ほんとに「ずっと一緒にいたかった」。
でもそのとき返ってきた答えは、「いや、永遠なんてそんなんはねえよ」というそっけない言葉であり、今の私だったら何言ってんだお前とその男子に一発喰らわすくらいのことはできるだろう。今の二十七歳の私なら。いや、もしかしたらできないかもしれないけど。まあとにかくもうその男子の名前も顔も誕生日もなんにも覚えてないのに、なんとなく私のなかに「永遠なんてねえよ」という言葉だけが、呪いとなって残ってしまった。永遠を約束できないなら、最初からいらないのだ。

情事の終わったあと、別に何も話さなくてもいい時間がある。そんなときにそんなようなことを、私とグレーゾーンの関係を続けているそいつに言うと、そいつは案の定「なんだかよくわからん」というような顔をした。そりゃそうで、そいつと私の個人的な経験則を並べて比較することはできない。私の感じたこと、考えてきたこと、やってきたこと、それはそいつのそれとは違う。理解なんてされないということは付き合っていたときからよくよく知っていた。そいつはなにかにつけて「お前のことが理解できない」と私に言っていたことも、全部覚えている。
それでもその話をしたのは、私はやっぱり懲りずにそいつに「ずっと一緒にいたいね」と言いたくなっているからだ。
永遠の呪いは解けないくせに、私は永遠をなぜか信じているらしい。
私とそいつは昔、一か月半くらい付き合っていた。そいつには違う女ができて、別れたのが一昨年の話だ。でもそいつは私の知らないうちにその新しい女と別れて、去年の十一月くらいからまた関係性が復活して、お友達になれればいいなあなんて思っていた私は年が明けて春がきて三月になっても、月に一回のペースでそいつに会っては、セックスしている。

非常にグレー。

「お前はなにが言いたいの」
傷ついてんの、とそいつが言う。
「ちがう、『ずっと一緒にいたいね』って言いたい、でもそれはいつかすべてが嘘になるから」

そいつは嬉しいのか面倒くさいのか、どっちともとれるような微妙な表情をした。
そいつは私のような情緒不安定さはなく、自分のいいところと悪いところを知っていて、ちゃんと折り合いをつけて落とし込んで生きている。そういえばなんかすごいいい人みたいになるけど、結局他人への優しさは自分のためだと利己主義を公言してはばからないところもある。そういうしっかりしているところとか、利己主義を公言すること自体の計算高さとか、いいんだか悪いんだかわかりはしないが私はそういうところ全部まとめてそいつが好きだ。別れた後もずっと。
そんなそいつは私のこと好きじゃない。私は好きだから付き合ってもないのに「ずっとに一緒にいたいね」とうっかり口に出そうとしちゃうし、そいつは私に同じような気持ちを返す気なんてないからちょっと面倒だと思うんだろう。
「全部嘘になるの?」
「そう、ぜんぶ嘘になる。嘘にしたくなかったけど、結局全部私が言った『ずっと一緒にいようね』は嘘になった。ずっと一緒にいられたことなんてなかった」
「そりゃそうだろ」
そいつはそう答える。高校のときのあの男子のように。

昨日の夜、春のあたたかい夜の中で二人でしこたまお酒を飲んでカラオケに行って、ふらふらになって意識も朦朧として気がついたらそいつの部屋にいた。そいつの部屋はとにかくものが多い。多分収入に見合ってない安い部屋に住んでるっていうのもあるんだと思うが、ベッドとテレビとテーブルとハンガーかけと本棚と、最近買ったという電子ピアノを入れてしまえば人が座ったり寝転がったりするスぺースなんてほとんどなかった。雑多な漫画本。空のペットボトル。使いかけの食器、アイロンのかけられていないワイシャツ。
でも私はそいつの部屋がとても好きだった。安心した。
セフレと呼んでいいのかどうなのか、わからないこのグレーゾーンにそいつもそれなりに傷ついているように、私には見えた。
だけど結局、一つの布団で寝てしまえばこうなるのだ。夜中、私は裸のままで、そいつは下だけ履いて、おなじくらいの時間に目が覚めた。
そいつの洗面所にあるメイク落としはもうずいぶん乳化が進んでいるし、たぶんいまも彼女はいない、はずだ、と思っている。いつも。怯えと喜びと、好きだという気持ちが混在している。
そいつの部屋の目の前には、道路を挟んで小さな川が流れている。カーテンを閉め切っていてまだ薄暗い部屋の中に、サラサラサラサラ水の流れる音が小さく聞こえる。私はそれも好きだった。
夜と朝のど真ん中に、私は目を覚まして起きて、窓を少しだけ空ける。煙草に火をつけて、ちょっとだけ空けた隙間から煙を外に吹く。真っ黒な空間が時々なにかの光を反射して、生き物みたいに見える、それがそいつの家の前の小さな川だった。サラサラと、やっぱり音がしている。やがてそいつが「寒い」といいながら起きてきて、窓をもうちょっとだけあけて、二人で煙草を吸う。
「寒くないの」
「寒いよ、私裸だし」
そう言うと、そいつは毛布をひっぱって私の肩にかけてくれる。「ありがとう」
そのままぼーっとしばらく煙草を吸って、もう一度寝なおそうと二人で布団に入って、やっぱりそいつはあったかく、そいつの匂いがして、私の頭の少し上から「苦しくない?」と声が降ってくる。これはなにを狙った優しさなのか? 私はやっぱり混乱する。そいつは律儀な男なので必ず腕枕をして、翌朝腕が痛い腕が痛いとわめくような男だ。
ある程度言語化できない関係を続けることは、お互いにある種の「セーシンテキクツー」を与えるもんなのだろうか。

私の頭を支えているそいつの二の腕が涙でぬれ始める。そいつは人に泣かれるのが何より嫌いだという。なぜかというと、自分が泣かせたんじゃないかと不安になるのが嫌だかららしい。まあつまり結局「悪い人」になりたくないのだ。
「なんで泣いてんの」
そいつが少し不愉快そうな声で私に言う。
「あんたがぜんぜん、なんも覚えてないから」
へへーと言って私は涙を笑いに変えてごまかそうとしたが無理で、涙はどんどん溢れてきて、私の鼻を通り過ぎて耳の中にまで入る。
「昔私が、『一人がやだ』って言ったら、『一人じゃないよ』って言ってくれたじゃん。忘れてるでしょ?」
もちろん忘れているはずだ。それを言った一週間後にそいつはほかに好きな女ができたと言って私を振ったのだから。
「うん、忘れてる」
そいつは素直に言った。
「そうだと思った」
私も素直に答えた。
「同じようなこと私もした。あんたの次に付き合った子に、『ずっと一緒にいようね』って言った。一週間くらいあとに振った」
そいつはははは、と笑った。
「約束しようとすると全部いつか嘘になる」
「悲しいの」
「そう、悲しいの」
そいつはこういうとき私を抱きしめたりしない。それが「同じ気持ちを返せない」という気持ちからきているのか、私にはわからない。しばらく私はボロボロと涙をこぼしつづけて、ため息をつきながらそいつはティッシュの箱を私に差し出す。私はそれを受け取って、涙を拭いて音を出して鼻をかむ。
そうして、でもやっぱりそいつは私の首の後ろに自分の腕を差し込む。私はそのままそいつの胸のあたりに顔をぴったりとくっつけて、また泣き続ける。
おそらくあと一時間もすれば夜が明け始める。
「俺寝るけど」
そいつがそういうので、私はご自由に、と答える。
「ねえ」
ふとそいつがそう私に問いかけるので、「何」と私は答える。「たくさん嘘をついてきたの」
「そうだよ」と私は答える。たくさん嘘をついてきた。たくさん嘘をつかれてきた。
例えばさっき言ったみたいに、そいつの次に付き合った男の子に「ずっと一緒にいようね」って言ってその一週間後に私はその男の子を振った。「なんだったんだ」と、責められもした。職場で「私はあと一年は仕事続けます!」と高らかに宣言した、その半年後に私は転職した。二十五歳には実家に帰ると言って二年が経った。それ以外、小さい小さい嘘を何度も何度もついた。もう思い出せないけど、たぶんたくさんついた。
「俺も嘘ついたっててことになるの」
「なるね」
「でも俺は本当のことを言ってたよ、いつも」
いつも言ってたよ、とそいつは言う。
「結局嘘になっちゃったというだけで、そのときは俺は本当のことを言っていた。本当に『一人じゃないよ』って思ってた。お前もそうだろ? そのとき、ずっと一緒にいたかったのは」
私はなにも答えられない。永遠の影を見つめ続け、そこから逃れることはできない。嘘になるとわかっていて、それでも誓わずにいられない。

私は眠れなかったので闇の中でずっと川の音を聞いていた。ちょっとした堤防みたいなのがあって、そんなに川幅は広くはないが、深い川だったと思う。きちんとした橋もかかっている。そういえば橋の建設方法ってどんななのかな、と私は思う。
こっち岸と向こう岸から、ちょっとずつ橋を作っていって、川の中に足場を組んでつなげていくんだと思うんだけど、たぶん。夜の中で水が生き物のように動いている。その音はサラサラだったり、雨が降ったら結構ゴーゴーというような音がする。橋をかけようとして実際かけちゃう人間はすごいよな、と思う。
永遠は距離なのか時間なのかわからないが、永遠に橋はかけられない。こっちの岸に私は立っていて、向こうの岸に誰かが立っている。私はそこに橋をかけることができない。それが永遠の呪いなのだ。
ずっと一緒になんていられない。ずっと愛しているなんてできない。ずっと愛されていることもできなければ、ずっと生きていることもできない。ずっと幸せになんていられない。王子様とお姫様は、そのあともずっと幸せに暮らしました。めでたしめでたし。そんなもんはない。
これで夜が明ければ私はこの部屋を出ていき、次にまたいつ会えるかの保証はない。この部屋を出た百メートル先でまた新しい恋に落ちてしまうかもしれない、嵐のような。今好きだという気持ちはきれいさっぱり消えてしまうのかもしれない。グレーはいつかはっきり白か黒かになる。
そいつの家の目の前の川が、川があるから、たぶん夜闇を縫ってそれが目の中に流れ込んできている。だからこんなに涙が出る。夜、全てが暗闇だから何が起こっているのか私には見えない。あーまた泣く、と思ったらもう泣いていた。ただ次はバレないように泣こうと思って、涙は流れるままにしておいた。鼻水はさっき渡された箱ティッシュからティッシュを静かに引き抜いて、拭いた。
なんでこんなに泣かなきゃならないんだろう。
なんで永遠について考えなきゃいけないんだろう。
どうして私たちはいつも嘘しかつけないんだろう?
人は私を子供と呼び、大人になれと言う。だけど私は永遠の呪いにかかった十七歳の春から、ずっと大人にはなれない。大人は時と場合によって使う言葉も変わる。態度も変わる。さまざまなペルソナがあるからこそ自分本来の姿に戻ったときに、安心するんだろう。
私は、この世のあらゆるすべてに脅威を感じる。空が青すぎること、社長がしっかり展望を持って会社を育てようとしていること、春のほこりっぽい風の中を歩くこと。先輩が結婚して子供を産んで、しっかり働きながら育てていくこと。知らない名前の花を見つけること。友達と遊びに行って楽しいことして、もちろんつらいこともあるけど人々の力を借りながらなんとか乗り越えていくこと。みんなが当たり前のようにしているすべてのこと。すべての地球。すべての宇宙。私を取り巻くあらゆる風や、水や、木々や花や人や、感情、色、音、匂い、何もかもすべてが恐ろしくなるときがある。
隣で寝ているそいつとものすごいグレーゾーンの恋愛と呼べるかわからない何かを続けている理由は、たった一つだ。ただただそいつといると安心するのだ。べつに何も怖がらなくてよくなる。私を取り巻く世界のすべてにたいして、そんなに恐怖しなくてよくなるのだ。それがなぜなのかはわからない。でも多分、神様は私の肩に手を置いて、「それが恋だ」と言うだろう。
「愛が足りないのか」
私は小さな声でつぶやく。私はもちろんそいつを愛しているけれど、そいつからしてみると私から愛されていないと思っているのかもしれない。
それと、おなじ出来事が私の方でも起こっている。もしかしらたそいつは、「彼女になろう」「結婚しよう」とかそういう言葉の口約束以前のレベルで私を愛してくれているのかもしれない。でも私は絶対愛されていないと思っている。
いつか、そいつが、「なにもかもすべてやめよう」といったら私は黙って身を引くことができるのだろうか?
得た傍からまた失って、悲しみだけがすべてで、切なさだけがすべてで、そうなのかもしれない。真理はそういうものだったのかもしれない。
だけど新しい喜びはすぐ手に届くところにあり、選択ができる。
喪っていくものはどんなに足掻いても失われていくもので、だからといって生や喜びや幸せを否定する理由にはならない。
「楽しかった」「あっという間だった」「もっと一緒にいたい」「ずっと一緒にいようね」こういう言葉を、簡単に吐くだろう。嘘であるとわかりつつも、言わずにはいられない。

川の音がする。
この呪いをとくには王子様とお姫様の愛のこもったキスが必要だと、そう思って私は眠っているそいつの唇に自分の唇をおしつけてみる。ちょうど良く弾力があり、渇いても湿ってもいない。
男女逆だからなあ、と私は思った。そんなんで呪いが解けるわけがない。
私の頬から流れ落ちて、涙はそいつの頬にきれいに着地した。
そいつが笑った。「なに、中学生かよお前」
私も笑った。「寝てるんだと思ってた」

そいつは流れている私の涙をティッシュで吹きながら言った。暗くて、どんな顔をしているのかはわからなかった。
「でもその、高校生のとき、ずっとに一緒にいたかったのは本当のことだったんだろ?
どうしてそう思っちゃいけないんだ?
嘘をたくさんついて、いつかぜんぶが嘘になるとしても、今この瞬間一緒にいたいなと思う気持ちを、どうして消しちゃわなきゃいけない?
保証もなんの担保もできない、明日にはまたぜんぶが嘘になって、お互い別の人間を好きになって、傷つけあってぼろぼろになって憎しみ合って、それでも今、この瞬間を言葉で刻んでおくことに何の意味もないとは、俺は思わない」

一瞬の間をおいて、私はぼろぼろに泣きながら言った。
「ずっと一緒にいようよお」
「うん」
「ずっと一緒に、いたい、いたかった」
「うん」
好きですとか付き合ってくださいとか恋人になってくださいとか、そんな言葉よりももっともっと大きな、私にとっての最上級の愛の言葉だったのかもしれない。
私はいつかそれが全部全部嘘になってしまっても今、いま、ずっと一緒にいたい。いたかった。これからもいたい。
いまこの瞬間、そいつの体温を感じ、匂いを感じ、声を聞いて身体の形を隅々まで知るその瞬間こそが、私の永遠だった。
口に出せば意味は脆く崩れる。永遠の愛を誓いますか?と問われて「はい」とこたえるその一瞬、それこそが私にとっての永遠だった。永遠が約束できないならいらないと、そういったけど多分そうじゃなく、私が好きだと思った瞬間、こいつを愛してると思った瞬間、抱きしめて抱きしめ返されて心が詰まるその一瞬を、多分人は永遠と呼ぶんだろう。

tonight is the night

教会の懺悔室に来た悪魔は、神に罪の告白を始める。「神よ、俺は罪を犯しました。人を殺しかけもしたし、金で人の心を買おうともした。自分を散々に傷つけ、立ち直れないほどに他人も傷つけた」

神は静かに「全て許します」と言った。

悪魔は懺悔室の格子戸の向こうから叫ぶ。「ここに金がたくさんある。そしてここには俺の体がある。俺の持っているものを全てやろう、だから俺のものになってくれないか」

悪魔は悲しいほど神に恋い焦がれていた。「お前が望むのなら、全部あげる」

神は静かに首を横にふる。「では神、俺は今から3000人ほど人を殺してくる、それでも俺を許すか」

「許そう」神は言う。

「神が俺を愛してくれるなら俺はそんなことはしない、俺だけ愛してくれたなら」

「それはできない、私はみんなを等しく平等に愛している」

「それは誰も愛していないのと同じことだ」

「そうじゃない」

悪魔は叫びながら教会を出て行き、帰って来た時には夥しい量の死体を引きずって来た、子供も老人も女も男も、それこそ見境なく。

神はそれを見て静かに涙を流した。

「お前は俺のためにそんなふうに涙を流してくれたことなどなかった」

神は涙で濡れた瞳で悪魔を見つめる。

悪魔はその瞬間、自分が神を愛し、執着し、憎み、恐れていたことを、優しくしたいということを突然思い出した。

「どうだ、許せないだろう」

「いや、許そう」

悪魔は神を試す。どこまで許されるのかを。なにをしたらもう許されなくなるのかを。

悪魔は神に恋をしているから、自分のところまで神を引き摺り下ろし堕落させたい。ありとあらゆる手を使い、神を堕落させたい。でもきっと堕落した姿を見たら、悪魔は心の底から後悔して本気で涙を流すだろう。いつも彼は矛盾している。

誰もを平等に愛する神の、特別愛される存在になりたかった、悪魔は。

だから神を試す、許されるラインと許されないラインのギリギリを攻める。そうして、いつか許されなくなった時に初めて自分の罪に怯えることができる。

悪魔は思う。神が俺だけ愛してくれたらいいのに。そうしたら、俺は全て捨ててみせるのに。

だが悪魔が神を愛したのは、神が誰のことも愛さないからだ。

それも、わかっている。

もしも神が悪魔を許さないと言ったら、悪魔は喜び手を叩いて「この偽善者!」と神を罵るだろう。そうして、次の日、静かに死ぬだろう。そのとき初めて本気で許されたくなって、絶望して泣くだろう。

「俺はいつも矛盾しているよ」と悪魔はひとりごちる。

懺悔室の格子戸に隔てられて神と悪魔は対話をしている。

やがて悪魔は懺悔室の椅子に座ったまま泣き出す。神は自分の手には入らない。入らないからこそ神を好きになったのだから。一生手に入らない。俺のものにはならない、身体も心もすべて。雨の音がし始める。よく磨かれた教会の木のベンチや懺悔室の格子戸が水分を吸い始めてきらきら光る。積まれた死体の山が悪魔を見ている。

「俺だけ愛してくれよ」

もういちど悪魔は言った。でも悪魔は知っていた。神様が悪魔を愛した瞬間、何もかもがご破算になることくらいわかっていた。

 

ところで私の中にも悪魔がいる!

いまそいつと戦っている!!

 

sketch 20

昨日あたりから突然ものすごい花粉きたのであわてて薬をもらいにいきました……
春だから情緒はグシャグシャですね!毎日世界の終りきてる!
みたいな暗い話ばっかいつもしてるからちょっと爽やかさがほしい

先日ラジオを聴いていたらかかった曲

くるり - 春風
ものすごく懐かしい~!!!!大学生の頃を思い出す!!!
あと「ハイウェイ」が好きでした くるりはどれも名曲揃いだけども

もう春なんです
春の歌ってほかになんかあるかな~と考えていました。
ユーミンはもう名曲すぎてなァ
春の歌っていったらあとはもうそのまんまスピッツの「春の歌」とか?
でもユーミンスピッツと同じ春を歌ってるけど、ユーミンは2~3月、春の歌は4~5月ってかんじだよな!

最近考えてるのがお題「春」の歌ってなんだっけ??
iPodぐるぐる回しつつ……
あとまた別記事で書くけど最近"酸欠少女"さユりちゃんにドはまりしてます
もちろんラッド野田くん楽曲提供「フラレガイガール」から入ったんだけど
3/1にニューシングル「平行線」が出て、またこれが「クズの本懐」というおもしろい漫画の主題歌なのです(漫画しか読んだことはない)
でも、今いちばん聞いているのは「それは小さな光のような」です。「僕だけがいない街」の主題歌だったらしい。
曲調すんごい好きだな~と思って作曲者調べたら梶浦由記さんだと・・・!!?!?!??そりゃ好きですよ!!!て思った。
See-Sawだぜ…好きだよ

まあそんなかんじで、最近さユりにドはまりしています。
小説もちまちまと書いています。

skirt

とてつもなく春らしい陽気で
私の心はちょっと違う世界に行ったままもどらず
こういう暖かい日は
世界がもし終わるんだとしたらきっと、
崩壊しはじめてああもう終わりなんだ~大混乱!殺し合い奪い合い!っていうよりか
むしろこういう美しく晴れた日になんの前触れもなく終わればいいのに
死の世界がとても近くにあった
薄い膜一枚通して
こういう暖かい日は


ART-SCHOOL Skirt スカート Live at AX Shibuya 2005

「彼女の匂いや指が
激しさ、スカートの色が
どうして とれやしない
どうして わすれられない
oh my sunshine 君が笑うと
oh my sunshine 子どもみたいで
oh my sunshine こんな話は
誰にだってよくあると
わかっているよ それぐらい
わかっているさ それぐらいは」

sketch 19

身体の具合が悪くなると夢見も悪くなる
昨日の夜中金縛りみたいになって、投げ出されていた私の両手をだれかが引っ張ったので、
私は怖くなって叫ぼうと思ったが恐怖でなかなか声が出ず、でもとにかく頑張ってああー!!と叫んだところで目が覚めたというか、
身体が自由になった。
触った手の感触としては、たぶん小さい女の子だった。姿は見てない
あるいは昔っからホラーで出てくるのは小さい女の子だから勝手にそう思ってしまったのかもしれない

ちょうど一年経つ。
どんなに頑張っても許されない罪というものはたしかにある。
神様に謝っても神様は何も答えてくれない。
許されたいが誰も私のことを責めたりはしない。
私が自分で許すことはできない。
謝ることは二度とできない。
何をもってして償いになるのか私にはわからない。
いっそのこと同じことして、同じ痛みを味わったらいいのか、そういう誘惑に駆られる
でもそれはしてはいけない。
そんなのほんとの愛じゃない、なんて、なにがほんとの愛なのか私は知らない。
そんなことを思って泣いた。
苦しいから薬を飲む。
許される日はこない。
弱い人間よりも強い人間のほうが苦しまなかっただなんて誰が言えるだろう
苦しい道をいく人よりも楽な道を選んだ人のほうが苦しくなかっただなんてだれが言えるだろう
いつかどんな人にも、誰にでも、その苦しみが報われる日がくるといい
神様はやはりそこにただいるだけで、私をじっと見つめているだけで
手を差し伸べてはくれない。
これは私のものだから、神様は肩代わりしてはくれない、だたそこにいるだけなのだ
あの人の苦しみや愛を肩代わりしてもくれない。神様はいかなるときも平等に優しく救いは与えない。
私の記憶を消し去ってもくれない。
しばらくおとなしくしていよう、2月だから
こういう晴れた春の日の、静けさ、光、春の埃っぽい匂い、私の精神はだんだんとガタガタに崩れていく。
夜、暗くなるのが怖い、眠るのが怖い。
そのくせ朝、美しく晴れていると死にたくなるのだ
それが春
沈丁花のつぼみが膨らみ始めた
一週間遅れて生理がきた
涙が流れる
後悔や、嘘や、裏切りを重ね続け、もう戻れない
でも春だ。春が来る

懺悔なんて、なんて醜い感情だ

Cynthia

シンシア

彼女は充足した人生を目指していて、それは友達がたくさんいて、中身のしっかりとある恋をして、ちゃんと就職して結婚して子供を産んで育てて、マイホームを買って、なにか継続できる趣味を持って世界を広げて、本をたくさん読んで映画をたくさん見て、たまに感動して泣いて、そういう、充足した人生を目指していた。
彼女はそれにあこがれていたのだ。
中高生のときには部活に打ち込んで、友達とくだらないことでもちゃんと笑いあってずっと長く付き合えるような友情を築く。誰か男の子を好きなって手をつないで寒い冬の帰り道を並んで歩く。勉強もちゃんとしていい大学に行って、大学のときには勉強もしつつバイトにあけくれておしゃれなものをたくさん買っておしゃれな女の子になる。そのころには自分の好きなものや嫌いなものをちゃんと知っている、総合的に自らを省みることのできる「大人」の一歩目を踏み出している。サークル活動にも精を出してそこで何度か誰かを好きになる。その中にとてもフィーリングの合う人がいて、その人とちょっと長く付き合って、結婚というものを真面目に考えてみる。
それなりにつらいことがたくさんあっても、それについてしっかりと考えて答えを出して乗り越えていく。もちろん隣には友達でも恋人でも、支えてくれる誰かがいる。そういう充足した人生にあこがれていた。そういうしっかりとした人間にあこがれていた。
だけど彼女の人生はそううまくはいかなかった。
彼女は人々と、最終的にはどこかでいつもすれ違った。
中学校のときはいじめられた。彼女には同窓生がなぜそんなことをするのか、その理由はいくら考えてもわからなかった。一ミリも理解できなかった。ただ聞こえるように交わされる言葉の暴力に彼女の存在はずたずたに傷ついていった。同窓会になど一度も呼ばれたことはなかった。彼女の傷ついた魂は、高校生のときに不登校を選ばせた。彼女は高校生活の三分の一、学校に行かなかった。それでもなんとか卒業できて、都会の大学に出て行った。とにかくもう、誰も自分のことをしらないところに行ってやりなおしたかった。すべてなかったことにしようと思い、彼女は大学に行った。
大学に行って、彼女は好きなものを好きなだけ買い、読み、見て、吸収することにつとめた。しかし、田舎から出てきた彼女にはたくさんの洋服はどれも同じに見えた。何を買えばいいのかまったくわからなかった。読んだ本も見た映画も、彼女のなかに何も残さなかった。
彼女には何も残らなかった。
大学に入ると、彼女には友達ができたが、彼女はそれを友達と呼んでいいのかいつもためらった。私は友達のこと何も知らないし、友達も私のこと何も知らない。そうずっと思い続けた。彼女は自分の悩みや、苦しみを友達に少しずつ少しずつさらけ出していった。だけど最終的にはいつもどこかですれ違った。彼女には、言葉は友達の心のなかにうまく沁みこんでいかないような気がした。どんなに言葉をつくしても、苦しみの十分の一も伝わっていないような気がした。
ある日、友達が彼女に言った。
「理解してくれない、できないって思ってるでしょ。でもそれってあんたが理解させないようにしてるんだけどね」
彼女はこの言葉の意味がまったくわからなかった。これっぽっちも理解できなかった。
彼女は恋人を作ることもできなかった。誰のことも好きにはなれなかった。いつまで経っても、彼女の待っているものはやってはこなかった。どんなに待っても誰も彼女を迎えには来なかった。
彼女の友達は、みんな幸せそうに見えた。彼らがただのボール紙の月を本物だと思い込めるのは、それを本物だと信じ込ませてくれる誰かがいるからだった。
彼女は紙でできたさまざまなものを目の前にして待ち続けたが、いつまで経ってもそれを本物だと信じ込ませてくれるような何かはやってはこなかった。



彼女は仕事から帰る夜道を一人でとぼとぼと歩いていた。冬の深夜、誰もいないしんとした路地は寒く、息を吐くと真っ白に凍った。彼女はそれを見て、自分の体温があたたかいのだということを、初めて知ったような気持ちになった。
ときどき生きていることが無性にむなしくなった。だけどそれは誰にでもあることで、それを過ぎればまたなんでもない日々がやってくることを彼女は知っていた。誰にでもあることだった。
真っ黒な夜空には一つ二つ、星が光っていた。じっと見つめるとちらちらとその輪郭が瞬いて、星が遠くの宇宙で確かに燃えていることを想わせた。彼女は澄んだ冷たい空気で身体の中を満たそうと、大きく息を吸った。だけど冷たすぎる空気は彼女の喉の中で凍って、彼女を咳き込ませただけだった。
人生はそううまくはいかないものだ、とわかっていても、いまだに彼女は待ち続けていた。彼女のなかを満たしてくれる大きなものがやってくることを信じていた。信じていなければ、ただこのなにもない空間を抱えて生きていくだけだ。彼女にはそれが怖くてできなかったので、ただ信じ込もうとつとめていた。
彼女の大学時代の友達が、結婚したのだと聞いた。教えてくれたのは別の友達だった。その友達は彼女が結婚式に来なかったことを、体調不良かなにかと心配して連絡をくれたのだが、彼女は最初から招待などされていはいなかった。
彼女は、結婚した友達の名前に、心の中で大きくバツをつける。特に何の感慨もなかった。あの子も、私のほんとうの友達ではなかったのだ。
彼女はそれからしばらく、好きなもののなかに身を埋めることを選んだ。好きな服、好きな本、好きな映画、好きな漫画、好きな食べ物、好きな、好きな、……だけど彼女のなかにはやっぱりなにも残らなかった。本も映画も漫画も、何が書いてあったのか、映されていたのかなにも覚えていなかった。それの何が好きだったのか、彼女はいつも思い出せなかった。
彼女のなかには空洞しか残らなかった。
彼女は、一体なにが楽しくてみんなが笑っているのかわからなかった。こんなに一生懸命考えても、彼女のあこがれていた「充足した人生」を勝ち取っていくのは、いつも何も考えていないような人たちばかりだった。たとえば結婚した友達のような。そういう人々があっさりと幸せになっていくことが、彼女には理解できなかった。
そういえば結婚した友人――あの子はいつか私に言った。「いつまで自分を特別だと思いながら生きてくわけ?」と。
そんなことを言われても、彼女は自分を特別だと思ったことはなかった。むしろ自分は普通すぎるほど普通だとしか思えなかった。
考えて考えていると、ある日突然死んでしまいたくなる。朝起きたら世界が終わっていますように、と願って眠りについて、起きてもそれが叶っていたことなんて一度だってなかった。朝はただの朝だ。いつの時点で死んでおけば私は幸せだったのかと考えることもあった。でもそれは今更考えたって何の意味のないことだった。生きていける限りは、生きていくしかない。
都会にでてきたときのように、誰も自分をしらない場所へと逃げたくなる。どこかへいってしまいたくなる。彼女が目を閉じて想像する風景はいつも海だ。沖縄だの海外リゾートだの、そういった美しい海ではない。水も濁っていて、空も曇っていて、ただ波が白い塊として浜辺に打ち付けてはまた音もなく引いていくような、閑散とした寒い、冬の海辺だ。
死んでしまう前に一度くらい、そういう海を見たい。
彼女は、じゃあこの苦しみをなにか作品にしてみようと思い立ったことがあった。たとえば絵だの、小説だの、詩だの、写真だのに。
だけど彼女のなかからは何一つ生まれてはこなかった。なにも書けなかったし、描けなかった。なにも思い浮かばなかった。彼女は自分の苦しみを何かに変えるような才能もなかった。なにかを一から作ろうとその前に立つと、なにをしていいのかわからなかった。
彼女は夜道を歩きながら、白い息を吐きながら、好きなもののことを一生懸命考えた。何か好きなもの。楽しいこと、好きなもの、好きなもの、好きなもの……
そうだ、と彼女は思った。私は今手袋をしている。この手袋は私の好きなブランドのもので、とてもかわいくて、買ったときは本当にうれしくて、大事に大事に使っていたのだ。彼女はコートのポケットから手を出して、そのリボンのついた黒い手袋をまじまじとながめた。暖かくてかわいい私の好きな手袋。
月明りにすかすように手袋を見たとき、左手の人差し指のところに穴が開いているのを見つけてしまった。長く使いすぎたのだろう、そういえばこの手袋は買ってもう四年も経っている、大切に大切に使ってきたはずなのに、使いすぎてすり切れたように薄くなった人差し指の部分に、穴が開いていた。
彼女はそれを見て、心がすっと冷たくなるのを感じた。彼女には結局空洞しか残らなかった。なにも残らなかった。
あれだけ大事にしていた手袋が、急に色あせてださいただの手袋に見えた。あんなにかわいくて暖かかったはずなのに、それはもうただの色あせた古い布にしか見えなかった。これは私だ。私そのものだ。
彼女は手袋をはずして、道端に捨てた。彼女は充足した人生にあこがれていた。満ち足りることにあこがれていた。だけど手袋一つとっても、彼女の心を空っぽにするだけだった。すべてのものは彼女からどんどん失われてしまったのだ。
空には本物の月が浮かんでいた。真っ白い月は半分欠けていて、それでもとても美しかった。あれがボール紙でできたものだなんて、いったい誰が信じるのだろう?
手袋をはずした手を、冬の深夜の空気が冷たく刺した。それでも彼女はふたたびポケットに手をしまうことはなかった。
それなら私はいったいどうすればよかったんだろう? 誰もそれが本物だと信じ込ませてはくれなかったのだ。
彼女はそう考えながら、暖かい家に向かって足を速めた。彼女の影が彼女を追い越し、足音が路地に冷たく響いていた。(了)

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sketch 18

春かよ、というような陽気が続きましたな~この気温差は身体に悪いから本当にやめてくれ 殺す気か
あったかくなるのは非常にいいと思うんだけどまた明日から寒いと聞いて

お知らせというほどでもないですが、
第24回文学フリマ東京 5/7に出ます~
昨年書いた中編にちょっと加筆したり直したりして、今回はじめてちゃんと文庫サイズで印刷屋さんに頼んでみようと思います。
表紙も描くぞ~
ちょっと何ページくらいになるかはわかんないんですけど

駅前の花屋にフリージアがあったので春か~まだ2月にもなってないんだけど
線路沿いの山茶花は満開をちょっと過ぎて、でもまだ闇の中で赤い
あんまり思い出したくないことが多すぎて、2月は
でも忘れたいことほど鮮明に覚えてる 失いたいものほどなくならず残り続けて
失いたくないと思えば思うほど手の中を簡単にすり抜けていく 何でだろうね?